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書籍

書籍の原稿

書籍の一部をお読み頂けます。

売れる販売員の全技術

<まえがき>
あなたは、次のようなことで悩んだことはありませんか?
「お客様が話に関心を示してくれない。思い切ったアプローチできない」
「リピーターが増えてくれないので、売上が安定しない」
「ネットストアをはじめ、ライバルに客足を奪われている」
「頑張って売ろう!」と思えば思うほど、かえってお客様の反応が悪くなる、というような負のスパイラルに陥っているという方も多いのではないでしょうか。
悩んでいる方のお気持ち、痛いほどわかります。なぜなら、私もまったく「売れない人」だったからです。

私は現在、営業マンとして生命保険を売っています。
幸運なことにお客様に恵まれて、MDRT(Million Dollar Round Tableの略、世界71の国と地域で毎年、業績トップ6%だけが登録資格を得られる、卓越した生保のプロによる世界的な組織)に18年連続で受賞させていただいています。
そして営業マンとして得られた数多くのお客様とのご縁をきっかけに、売り場に立つ販売員をはじめ、接客を仕事にしている人、セールスマンたちへ研修やセミナー、コンサルティングを行うようになりました。
クライアントは、生命保険・銀行・化粧品販売・アパレル・百貨店の外商・飲食店・旅行代理店・病院と、業種・業態は幅広いですが、皆さま口をそろえて
「どうしたらもっと売上が伸びるのか?」
「どうしたらお客様に再来店していただけるのか」

「何をすれば『あなたから買いたい』と言っていただけるのか」という、かつて自分が抱えていたことで困っておられます。私の研修やセミナーでは、目の前の方が販売員にせよ、セールスマンにせよ、「商品を売るときには、お客様の感情に注目してください」ということを繰り返しお伝えしています。
この本でも、私が知る限りの「売れるためのヒント」を取り上げていますが、この姿勢はすべての「土台」となるもの。私自身も今も大切にしていることです。
クライアントからは、次のような成果の声を続々といただいております。
「お客様のほうから、ありがとうと言ってくださるようになりました」
「お客様が早く決めてくれるようになりました」
「客単価が2倍になりました」
「お客様から紹介が出るようになりました」
「法人様の契約ができるようになりました」

「富裕層のお客様が増えてきました」
「クレームが極端に減りました」
「モノが売れない時代」と言われて久しいですが、幸運なことにたくさんのお客様から選ばれている自分の状況を、とてもありがたく感じています。
保険のご契約者数、そしてセミナーの受講生を合計すると、累計で7万人以上になりました(2015年6月現在)。

こんな私も、冒頭でお伝えしましたが、はじめは売れない人でした。

スタートは、悩んでいる皆さんと一緒だったのです。
お客様から嫌われていた銀行員時代
私のキャリアは、地元・京都の地方銀行の銀行マンとして始まりました。一番記憶に残っているのは、初めて転勤してからの約2年半です。
配属先は本店、「営業推進部」の「新規開拓チーム」。当行と取引のない中小企業の経営者へ「新規融資」をお願いする業務でした。
これがまったく成約できませんでした。
門前払いで、こちらの話すら聞いてもらえませんでした。理由は、お客様が当行のことを「嫌い」だったからです。
勤めていた銀行は、いわゆる第一地方銀行。店舗網やATM数など、地元でのシェアはダントツで、取引がないと生活がしづらいくらいです。

それなのに取引がないということは、「かつて融資を頼んだけれども、渋られた、断られた、減額された」というようなネガティブな経緯があったからでしょう。
「嫌い」というシンプルで強力な感情が、お客様の心を閉ざしていたのです。
それでは、こちらの話を聞いてくれるどころか、「買っていただける」はずがありません。悪い印象を持った銀行から、ノコノコと入社間もない若造がやってくるものですから、その対応は抵抗と言ってもいいような厳しいものでした。
お茶はかけられるわ、塩は撒まかれるわ、コーヒーはかけられるわ……。
挙げ句の果てに、私のほうから「お願いですから、せめて『水』にしてください」(シャツが汚れませんので)とまでお願いする始末。
そんなこんなで、私の営業キャリアは「断られる」「避けられる」「嫌われる」という売れない街道まっしぐらでスタートを切ったのです。

そんな状況が劇的に変わったのは、アプローチ方法を変えたからです。
謝ることから始めたら……
自分が勤めている銀行が、取引のない人たちからは「嫌われている」ことに気づいてからは、まず「謝ること」から始めました。
「こんにちは、京都銀行・営業推進部の井上健哉と申します。この地域の担当で回らせていただいております。ご挨拶させていただけますでしょうか?」と私が申し上げると、お客様は「京都銀行?何しに来た?帰れ、帰れ!」と冷たい応対。でも、私もめげません。
「えっ、いったい、何があったのですか?」
「何があったかも知らずに来たのか?天下の京都銀行は、私のところみたいなちっぽけな企業、相手にしないんじゃなかったのか!」
「いえ、決してそんなことはありません」

「ほんとに何も知らずに来たんだな。君とこの銀行は俺が20年前に商売を始めるので融資の相談に行ったとき、ろくに話を聞こうともせずに、無下に断ったんだよ」
「ええっ!そうなんですか?話もろくに聞かずに断るって、そんなの許せない……。断った担当の名前覚えていますか。私、その人に会って、どうしてろくに話も聞かなかったのか理由聞いてきます。それから、改めて私がお詫びに参ります」
「いや、君がそんなに熱くなるなよ。もう古い話だ。
君、若いのになかなか、おもしろい子だね。今までの京都銀行さんのイメージじゃないよ。いったい、どんな仕事をしている部署なんだい?」
このようなやり取りをすることで、まったくの門前払いから、一歩前進し、話を聞いていただけるようになっていきました。

気がつけば、配属先に在籍していた2年4カ月(28カ月間)で、新規融資取引成約先数143社、融資実行累計金額は39億円にものぼり、同行始まって以来の金字塔を打ち立てることができました。
飛び込み営業で、出会ったほぼすべての人から「要らない」と断られ続けていましたが、最後には「あなたなら借りてもいい」と多くの人に言っていただけるようになったのです。
結果を出せたきっかけは、お客様の感情に注目し、アプローチを変えたこと。
「嫌い」という感情に先回りして誤ったことで、お客様の反応は大きく変わったのです。
転職してまた売れなくなった
その後私は、ご縁があってソニー生命へ、保険を売るセールスマンとして転職をします。
銀行時代に培った度胸とスキルで「たくさん売ってやる」と意気込んで悠々と構えていましたが、またもや最初は、「まったく売れなかった」のです。

親しかったはずの友人に断られる。親戚にも電話を切られる。その繰り返しでした。
今でこそ、売れなかった理由はハッキリとわかります。
入社するまでに多くの宿題を課せられたのですが、そのなかで、一番辛かったのが、「プロスペクト100」と呼ばれる、いわゆる「見込み客リスト」づくり。
「生命保険販売員資格」に合格したら、まず手始めに「誰に売りに行くか」を記したリストです。100人の見込み客を書かなくてはなりませんでした。
特に1番から10番目は、「スーパーXマーケット」といって、無条件に保険に入ってくれる人、例えば、家族・親戚・親友等々を書かされます。保険営業は、かつてGNP(義理・人情・プレゼント)と言われましたから、わからなくもありません。

しかし、私が得意とする売り方は、そういった人間関係がゼロの地点から始めて、自分の実力で信頼を勝ち取り成約するスタイル。縁故を武器に買ってもらうなど論外でした。ですから、この層をリストアップさせられたことに、強烈なアレルギー反応を起こしました。
そうこうしている間に、入社、研修期間、生命保険販売員資格の試験と矢のように時は流れ、生命保険販売がスタートしたのです。
相変わらず、気乗りはしませんでしたが、「スーパーXマーケット」に営業を開始しました。
ところが「無条件に保険に入ってくれる」などとんでもない。
まったくの正反対。

「もしもし、お久しぶりです。親戚の井上健哉です。京都銀行を辞めて、ソニー生命にいきました。是非、保険の話を聞いてください」と告げると、「今、忙しいので」と、ガチャンと電話が切られます。
電話がダメなら、訪問してやれと親友の家を突撃訪問すると、玄関先で、
「10年後に回って来てくれ。最初に俺のところに来るなよ」
正直、心が折れました。
こんなことを繰り返し、私は自信と同時に大切な人間関係を失っていきました。
そこで、当時の上司に素直に相談して、自分なりのスタイルでやらせてもらうことにしたのです。

猛勉強の末、V字回復
約1カ月間、毎日15時間ほどの研修で、生命保険の知識を叩き込まれたものの、自分が知っていることと人に教えられることとは別物でした。私には、人に教えるだけのものがなかったので、今一つ自信が持てなかったのです。
そこで約1カ月間、徹底的に生命保険の仕組み、約款やっかん、自社商品の研究、競合他社の商品との違いなど、自分の腹に落ちるまで勉強に没頭しました。
そのおかげで、複雑だった生命保険の約款がスーッと理解できるようになり、丸暗記から解釈に変わっていったのです。そして、怖いくらいの自信がみなぎってきました。
「生命保険とは何なのか?」それがほどなく身体で理解できてくると、人に伝えたい衝動にかられました。

そして、例の見込み客リスト、「プロスペクト100」の最後である100番目の人からアプローチを再開しました。
最も人間関係が薄いところから始めたのです。
持っていた名刺から数合わせで最後の100番目まで書いたものの、私とはほぼ人間関係がなく、生命保険の話を聞く義理も何もない人たちです。
これがよかった。銀行時代の飛び込みと同じく断られて当たり前ですから、「NO」と言われてショックなんて受けませんし、保険の話を聞いてやろうと言われたら、むしろこちらが構えてしまいました。「この人、病気あるのでは?」と。
嫌だと思っている人の感情に先回りして、こちらに振り向いてもらうのは、前職の経験から誰よりも自信があることでしたので、ここから売れるまでは早かったです。

私が、「だいたい、生命保険の話なんて聞くのは嫌でしょう」と切り出すと、お客様は自分の言いたいことを先に言われてしまい、返す言葉がなくなります。
「えーまぁ、いや、そんなことはないですが……」とお客様。
「実は、私たちが自ら買いたい保険とお客様に売りたい保険は、必ずしも同じとは限らないとすればどうでしょう」
「えっ、そうなんですか?どう違うんですか?」
「では、20~30分、お時間いただけますか?」
「ええ、もちろん」
ここでも、「お客様の感情に向けてアプローチすること」が有効でした。
そうやって小さな成功体験を積み重ねていき、気づいたらトップクラスの成績を挙げられるようになったのです。

すべては「欲しい」という感情を引き出すことから
その後、「売れるヒントを知りたい」という周りからの声をきっかけに、私はこれまで学んできたノウハウを伝える場である「けんや塾」を主宰します。
この塾は、2015年で14年目を迎え、これまでの受講生の約75%にあたる393人がMDRTに認定されるなど、生保業界でも驚愕の成果を出し続けています。
働き始めてから、数えられないほどの逆境を経験しましたが、乗り越えられたのは、お客様と話すのが好きだったから。

だからこそ「お客様の心を動かしたい」という気持ちが湧いてきたのです。
あなたも、お客様の心に沿って、いい人間関係を築いてください。そうすれば、きっと「あなたからだからこそ買いたい」と言われる販売員になれるはずです。
接客して商品を売ることほど、充実した仕事はありません。
本書が、あなたのお役に立つことを心から願っています。

2015年6月井上健哉

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